日常あったことや、その時々の萌えを語り散らす場。
届かない君がいなくて 切なさが風にそよぐ
上のある曲のワンフレーズが、これを描いている時妙にぴったりだと思った。
久々に文なんぞ書いてみまして、そのイメージみたいな絵なんですが、主線なしっていうのに挑戦してみた。
…うん、慣れないことやるもんじゃないですね。
髪がバサッとなってていつもと違う感じですが、一応シュヴァルツです。
そんな訳で続きから小話。
・数年後。シリルは死んでます
・色々と文がおかしい
・よその子無断拝借
以上がOKな方は続きからどうぞ。
あと、ちなみに今回の主従はシリシュヴァではなくあくまで主従愛です。
腐要素はあまり入らないようにと書いたつもりですが、そこはかとなくそんな感じがするかもしれません。
秋口に差し掛かった頃。ひゅうと音を立てて風が通り過ぎる丘に、一人の男が立っていた。
広い墓地。眺めのよい小高い丘に並べられた墓石の数々。
その中の一つの前に、膝をついてしゃがみこむ。
「シリル様、今日は少し遅くなってしまいました。申し訳ございません」
灰色の燕尾服をまとった背の高い男。短い黒髪を風が撫でる。
手に持った小さな花束を墓石の前にそっと置いた。
「今日はユイトナさんが育てた花です」
美しく咲いた季節の花。さすがはかの庭師が育てた花というべきか。
主人は綺麗なもの、美しいものが好きだった。
夕暮れを過ぎて宵を待つ、赤と黒が入り混じった僅かな間の空を何より好んでいたが、さすがにそれは捧げられないので、こうして花を持ってきている。
人の手で育てられた花の時もあれば、道端に咲いていた野花の時もある。
とにかく、その日に綺麗だと思った花があれば、それを捧げていた。
“自分が醜いからこそ綺麗なものに惹かれるんだよ”などと彼は自虐を言っていたけれど、青空を、夕焼けを、花を見つめて眩しそうに心から微笑む笑顔を、自分は美しいと思ったのだ。
初めに一言二言語りかけた後は、何を話すでもなく、ただ夕焼けの影を背負う墓前に座り眺めていた。
この下に主はいる。身は消え骨だけになろうとも、二度と返事が返ってこなくとも。
そう思えば、黙って座るだけでも良かった。ここは落ち着く。
「…シュヴァルツさん」
がさりと草を踏む音。後ろには長身の男が立っていた。
どれだけの時間そうしていたのか。いつの間にか空はすっかり暮れ、太陽の代わりに月と星が輝いている。
まだ秋に入りかけたばかりだとはいえ、日が落ちれば風は冷たい。きっとその身は冷えているだろう。
かくいう自分の格好も、厚手ではあるがシャツ一枚。彼よりよほど薄着なのだが。
バンダナから出ている薄紫の髪と、彼の黒髪がばさりと揺れた。
「今日はもう帰ろう。ほら、風も強くなってきた」
「…はい。そうですね」
そう答えたものの、立ちあがる気配はない。
無理矢理立たせて嫌がられるのも本意ではないので、彼が自ら足を動かすのを待った。
「折角今日咲いたばかりの花だというのに、いつもすみません」
「いいんですよ。シリル様が喜んでくれてるならいいんだけど」
「ええ、きっとお喜びです。シリル様は貴方の育てた花をいつも綺麗だと仰っていました」
今日供えた花束が、風に吹かれてひらりと震える。
燕尾服の隣には、昨日供えたか細い野花の束が回収されていた。
主が亡くなっても、シュヴァルツは取り乱して嘆くこともなく、ごく落ち着いてその後の生活を送っていた。
その日が来るのは、とうの昔にわかっていた、覚悟していたことだと。
そのせいか、毎朝早く起きて朝食の準備をし、ベッドのシーツを取り換え、掃除洗濯をし、午後には小さなチョコレート菓子とともに紅茶を淹れる。その習慣は変わらなかった。
変わったことといえば、それ以外の仕事についてだ。
彼は空飛ぶ船を降りていた。
名前自体は今もアドリビトムに属してはいる。頼まれれば物品調達の手伝いもしている。
ただし、ユイトナは主が亡くなって以来、彼が剣を振るった姿を見たことがなかった。
シュヴァルツならば、自分が死んだ後もすぐ誰かの元に執事として勤められるだろうし、傭兵としてだって生きていけるだろう。確か主はそう言っていた。
しかしシュヴァルツはそのどちらの道も選ばなかった。
仕えるべき人も、護るべき人も、もういない。たった一人しか、いないのだ。
「もう少し医療が進んでいたら、もっと生きられたんですかね…」
「本来ならば家で静養していなければならなかったのに、旅などしたら寿命が縮むと、医者にも言われましたね。二十歳まで生きられるかわからないと…」
それでも、ベッドに縛り付けられて50歳まで生きるよりだったら、精一杯短く生きてやると主は言った。
シュヴァルツもそれを止めなかった。長く生きて欲しいとは思いつつも、好きなことをさせてやりたかった。
「しかしシリル様はちゃんと成人まで生きられました。二十歳の誕生日に、祝いの酒を酌み交わすことが出来た。嬉しかったですよ…とても」
ふ、とシュヴァルツの口元に笑みが浮かぶ。
立っているせいで俯瞰で見るその笑顔はなんだかとても。
「…わかっているつもりだったのに。人の感情とは思い通りにならないものですね」
とても笑っているとは思えない笑顔。シリルが健在だった時他人に見せていた社交辞令的な笑顔でもない。無理矢理口角を上げただけのもの。
わかっていた。覚悟していた。
それなのに、自分は変わらない生活を送っている。
仕える主もいないのに毎日灰色の燕尾を着こんで、自分しか食べないのにきっちり決まった時間に食事を用意して、大して気にはしないのにベッドのシーツを変えて、部屋を掃除して洗濯して、午後には小さなチョコレート菓子と共に紅茶を淹れている。
そう、ギルドの船を降り、毎日この墓地に来る以外“変わらない”生活を送っている。
ああ、私は受け入れられていないのか。
頭でわかっているつもりなのに、心は傷ついていた。
どんなに覚悟しようと、それで受け止めきれるほど小さな存在ではなかった。
主は、情けないと笑うだろうか。
ゆっくりと立ち上がる。今は何時だろう。
「お待たせしました。…帰ります」
「…うん」
名前が刻まれた墓石に向かい一礼すると、暗くなった道を戻る。
今日は月が明るい。街灯が少ない道でも、歩くのにさほど労しない程度には。
「ユイトナさん、わざわざ迎えに来て下さらなくてもいいんですよ」
「俺が好きでやってることだから、気にしないでくださいよ」
時々、シュヴァルツの姿が遅くまで見えない時はこうして迎えに来る。
放っておいたら朝まであそこにいるとでも思われているのだろうか。
こんな状態になってしまった自分に付き合わせるのは、少々申し訳なくも思う。
「すみません」
「…謝らないでくださいよ」
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こういう時は「ありがとう」と言うべきだったか。
切ないセリフったー
お題「(作り笑顔で)わかってるつもりだったのに」
以前よそ様でやってらしたのを見て自分もやってみたくなったんですが、ネタにしづらいのばかりだった。
シュヴァルツのは割といけるかと思い考えてみましたが…どうだろうこれ。
シリルが死んだ後のシュヴァルツを想像すると、別の人に仕えるとも思えないし、そうなるとニートしかないなと(←
前にもシリルが死んだら墓守させるだのなんだのと書いたことある気もするのでそんな感じで。
あとはアドリビトムからの頼まれごとをちょこちょことやって、その報酬で生活してそうです。
パッと見は今までと変わらない。でもちょっとしたところがなんか違う。
そして庭師さんを勝手に巻き込んでスミマセン!
庭師さん優しいからシリルが死んでも傍にいてくれるかなとか色々妄想しました。
おそらく、もう彼が好きになったシュヴァルツではないかもしれないけど。
むしろこれから傷を癒して昔のツンを取り戻してそれなりに楽しく生活していけばいいじゃないとかあれこれ妄想s(強制終了)
口調がよくわからなかったのでラフな感じの敬語になりました。
では、ここまで読んでくださってありがとうございます。
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